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日中の架け橋(試験投稿)

大網白里市国際交流協会文化公演「李広宏リサイタル」資料より
大網白里市国際交流協会文化公演「李広宏リサイタル」資料より

私は、地方の田舎町でボランティアをしている。その縁で、ある中国・蘇州出身、神戸在住の李広宏さんという歌手を知ることとなった。まだ本人には直接お会いしていないが、彼のコンサートを町で行うべくそのための準備を始めている。色々、下調べをしていると、実に素晴らしい方である。

  李さんが日本に来たきっかけは、彼が少年のころ日本の歌をラジオで聴き、言葉の意味は理解できなかったが、女性歌手の優しい歌声と美しいメロディーに感動して、子供のころからの極悪日本人のイメージとの落差に戸惑いながら日本に強い憧れをもったという。その歌は「夏の想い出」だった。

  李さんは日本留学の夢を実現し、周囲の素晴らしい日本人にめぐまれて、アルバイトをしながら日本に溶け込んでいったという。そして、その良さを日本人が忘れたか、あるいは気付かない日本の歌を中国語に翻訳して中国に紹介して日中文化交流に貢献している。

  阪神大震災の時は、3歳の息子さんを2階から抱きかかえて避難し、命拾いした経験があり、2008年の中国四川大地震には心を痛めたという。この頃、李さんが早く父親を亡くされ、今も風になって見守ってくれているという思いから、新井満氏の同意を得て「千の風になって」を中国語に翻訳し自費でCDの制作をしたところだった。

  四川の大地震で愛する人を亡くされた沢山の被災者を慰めようと、李さんは四川に飛び激励コンサートを敢行し、中国語で「千の歌風になって」を歌い肉親を失った地震被災者を慰めたのである。それだけではなく、日本に来て20年間こつこつと貯めた八百万円もの貯金をはたき、四川省に小学校を寄贈したという。この経緯はテレビやメディア何度も繰り返し報じられている。

  李広宏さんの「故郷」という歌を聴いたが、この歌がこんなに心に響く名曲だとは思ってもみなかった。外国人である李さんが、如何に日本の心を深く理解し、言葉の意味を解釈して心でこの歌を歌っているかが分る。

日本にはこんなに素晴らしい歌があったのかと再認識するとともに、外国人に日本の文化の素晴らしさを教えられたような気がした。彼の歌う「蘇州夜曲」は“サントリー烏龍茶”のCMにも採用されている。

  李広宏さんは少年の頃の感受性を今でも持ち続け、周囲の人に常に感謝し、喜びも苦しみも分かち合う人らしく、歌唱の巧拙を超越した限りなく透明な心で歌う彼の歌は、観客に耳で聞くことを忘れて、心で聴いていることに気付かせてくれる。

  中国人である李さんが、日本の歌の美しさに感激し来日して活動し、今度は日本に来た李さんが日本人に、日本の歌の素晴らしさを我々日本人に教えてくれるとは、これこそ本当の日中文化交流ではないだろうか。

その李さんが、11月7日(土)大網白里町保健文化センターで午後2時より公演の予定である。

演し物は、日本語と中国語による「千の風になって」、「蘇州夜曲」「愛の賛歌」、彼が日本に憧れた動機となった「夏の想い出」、当地域ゆかりの「里の秋」や「月の沙漠」、最後の〆は「故郷」をお願いしたいと思っている。

 

四川の空を吹き渡った「千の風」が秋の房総に吹き渡ることであろう。